古来より「水の確保」は、生活には欠かせない問題で、とくに暑く乾燥する地域では、想像以上に大切です。
インドにはガンジスやヤムナなどの河川はあるものの、内陸部では日照りが続くと水不足になり、人も動物も生きていけなくなります。そこで、「雨水を貯めて生活に使う」ことが考えられ、インド各地に階段状の井戸が作られました。
日本では、井戸といえば、細い円柱状に深く掘られ、地下水をくみ上げる形式ですが、インドは広範囲から雨水を集めて一箇所に集めるためにかなり大規模な構造です。階段状となっているのは、人々が水を汲みに行けるようするためです。
一部のものは美しい装飾が隅々にまでほどこされ、まるで王宮のように見えます。大規模なものは、グジャラート州に多いですが、デリー近郊にもいくつか残されています。
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インドへの観光旅行は、デリーを中心としたコースが多いので、気軽に立ち寄れる階段井戸をご紹介します。パッケージツアーのプランに含まれていなくても、「階段井戸に行きたい!」とお伝えいただければ、可能な限り組み込みます。ご希望の方は、どうぞご遠慮なくご相談ください。
■ジャイプール近郊のアバネリ村の『チャンド・バオリ』
ジャイプールから約95km(車で約1.5時間)の小さな村にある、長方形の四角錐を逆さにしたような階段井戸は、月(チャンド)の井戸(バオリ)と名づけられています。深さは約30メートル、13層の規則正しい幾何学的なデザインです。
この階段を下りて下りて下りて下りて下りて・・・水を汲んだら 上がって上がって上がって上がって上がって・・・
想像するだけで疲れてしまいそうですが、上から覗いてみるぶんには、リズミカルなデザインがなんとも小気味よく、近代的な宮殿のようにも見えます。
ここまでしても確保したい「水」。いかに大切なものかを感じさせられます。
同様の構造をした階段井戸としては、グジャラート州モデラーの『スーリヤクンド』があります。
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■ニューデリーのクトゥブミナール近く『ガンダク・キ・バオリ』
地元の人に「硫黄(ガンダク)臭い井戸」と呼ばれてる悲しい階段井戸があります。
13世紀に建造された歴史ある井戸ですが、管理がされておらず水が腐敗して残念な状態になっています。路地裏にあり、昔から人々の生活用水として利用されていたことが想像されます。
とてもシンプルな構造で、これを見るとグジャラート州の階段井戸がいかに華麗で手が込んだものなのか、改めてわかります。
水が張っていて見えませんが、奥深く彫られた5層構造をしています。
■ニューデリーのメローリー遺跡公園内『ラージョン・キ・バオリ』
16世紀に造られた3層構造の井戸が、『硫黄の井戸』の近く、静かな森の中に残されています。
付近は広大な遺跡公園となっており、11世紀から約1000年にわたり築かれた寺院や霊廟などの数々の遺構が残されています。
ほとんど手付かずで廃墟の森のようですが、そこがまた良い空間となっています。時間が止まった世界に迷い込んだような不思議な気持ちになります。