インドといえば、まずイメージする「白亜のタージマハル」。総大理石に美しい彫刻が施された巨大な建造物は、お城やお寺のように見えますが、実は「お墓」です。
「インドで人が亡くなった後は、ガンジス川に遺灰を流し、お墓は持たない」と思われていますが、それはヒンドゥー教徒だけの慣わしで、他宗教では異なった弔い方をします。
イスラム教では「またそのうち復活する」との思想があり、亡骸はそのまま保存します。(ヒンドゥー教のように焼いたり流したりするのは、とんでもないことらしいです。)そして復活までの時を過ごすための“家”として霊廟が作られます。高名な聖人や王侯貴族たちのものは特に大きく豪華にデザインされており、中でも、もっとも美しいとされるのが、このタージ(=王冠)マハル(=宮殿)廟です。
シルエットだけでも、とても絵になります。
—————–
このお墓を作らせたのは、ムガール帝国第五代皇帝シャー・ジャハン。アグラ城で行われたバザーで見初め、妃として迎えた愛する妻ムムターズ・マハルのために建設しました。
300kmも離れたマクラナ(ジャイプール西)から大量の白大理石を運ばせ、世界中から色とりどりの宝石を取り寄せ、その莫大な建築費用は国の財政を圧迫するほどでしたが、すべては亡き妻への純粋な愛のため・・・!
結果、国は傾きかけ、シャージャハンは息子たちによって王位を奪われアグラ城の一角の小部屋に幽閉されてしまいます。そして74歳の生涯を閉じるまでタージマハルを眺めてムムターズを想いながら過ごしたのでした。
シャー・ジャハンは、自分用にも対岸に黒いタージマハルを建設しようと計画していましたが、結局は叶わず、亡き後はムムターズの隣に埋葬されました。
現在、大小二つの棺が仲良く並んでいるのを見ることができます。
—————–
■見学の流れ(西門と東門がありますが、東門からの場合)
タージマハル東門からさらに750メートル東にあるチケット売り場で、入場券を購入します。(2015年11月現在1250ルピー/約2500円*以前の750ルピーより値上げされました)
チケットのほかに、「ミネラルウォーター」と「靴用カバー(基壇に揚がる際に使います)」の“タージマハル見学グッズ”がセットでもらえます。大きなリュックなどの荷物はコインロッカーに預け、最小限の貴重品(お財布、パスポート、カメラ、携帯電話)のみをもち、徒歩(約12分)または電気自動車(約5分)で入り口へ。
入り口ではまず、荷物検査と身体検査が行われます。世界各国からの外国人旅行者やインド人観光客が長い列を作っていることがありますので、前の人とぴったりくっついて並びましょう。(さもないと、割り込まれます!)
身体検査を経て中に入ると、まず見えてくるのはレンガ色の立派な門。
そこを進むと、見えてくるのが、広い空にぽっかりと浮かぶ白いドーム!
さっと進むのではなく、どうぞ少し立ち止まって、この位置からの眺めもお楽しみください。門のこちら側は俗世界、あちら側には神聖な別世界が広がっているように感じます。
そして門をくぐると、巨大な霊廟タージマハルの堂々としたたたずまい・・・
あまりの大きさに、すぐ近くにあるかのようですが、実際には300メートル(徒歩5分)ほど離れています。
離れたところからの全体像は、写真などでよく見かけますが、ぐっと近づいてみてみると、またちがう印象を受けるでしょう。遠目には真っ白に見えますが、実はカラフルな装飾が施されているのです。
丁寧で繊細な彫刻も随所に施されており、360年以上前の石工達の技巧に感動します。
中に入ると、シャー・ジャハーンとムムターズの棺が置かれているのが見えます。(中は写真撮影禁止)
タージマハルから向かって右側にはモスク(イスラム教の礼拝堂)が、
左側には小さな博物館(入場料別途/細密画などを展示)があります。
タージマハルの美しさは「完璧なシンメトリー(左右対称)」にあるといわれます。左右対称にこだわって、礼拝堂と博物館の外観は全く同じデザインになっています。
上空から見ると、左右の正面だけでなく立体的にもシンメトリーに作られているのがわかります。
—————–
■アグラを訪れるには
●場所
首都デリーから約200キロメートル
車で片道約4時間。2012年、デリー~アグラ間をつなぐ高速道路「ヤムナ・エキスプレスウェイ」が開通し、専用車での日帰り観光がかなり楽になりました。
ドライブインのお手洗いは、インドにしてはそこそこきれいです。
この道路の名前は、タージマハルの後ろを流れるヤムナ河にちなんでいます。
こちらがヤムナー河。
または、かなり早朝(6時または7時)の出発となりますが、急行列車で片道2~3時間。
「インドの電車に乗ってみたい!」というかたは、ぜひ『シャタブジ・エキスプレス』をご利用ください。
機内食のようなお食事サービスが楽しく、たくさん乗っているインド人ビジネスマンの姿も観察できます。駅の雑踏もインドらしくて見ものです。
た だし、インドの電車は乗車するまでが大変なので(出発するホームが決まっていない、アナウンスが全く聞き取れない、車両が多すぎて自分の指定席を探すのが 困難)、送迎サービスをお付けいただくか、ポーターにチップを渡して席まで案内させるかしてください。間違えた電車に乗ってしまうと、大変です!
********
2016 年4月より、『ガティマン・エキスプレス』(朝8時発、所要100分)の運行が開始されました。デリーとアグラの2駅だけに停車します。朝の出発時間が早 すぎて、アグラ以外の駅にも停車する『シャタブジ・エキスプレス』よりも、利用しやすい特急列車です!(追記:2016年7月)
********